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おばん 

3月14日はおばんの命日であった。

おばんという人がなにものであったかというのを私はよく知らない。
なんとなく母方の親戚の何某か、母方の親戚の誰かに嫁いだひとであろうかというくらいの認識であった。
おばんは老人ホームに住んでいた。
その老人ホームに、父と母に連れられて、姉と私(と、まだうんと小さかった弟)はおばんに会いに行っていた。
私が小学生に上がるかあがらないかぐらいのときだったと思う。
そういえば母方の親戚と思っていたのに、当時健在だった祖母と一緒に行ったことはなかった。

ホームは小綺麗で明るくて、感じのいいところだった。
ころころと誰かが笑う声がよく響いていた。
だから、おばんはいつも少し浮いて、居心地悪そうに見えた。
おばんは明るい小さな部屋に小さく座って所在なさそうにしていた。
小さな作りつけの棚の中身と小さな旅行かばん、それがおばんの持ち物のすべてだった。
私にはそれがとても奇異なものに思えた。

母は棚の中身を確認して、タオルがないティッシュが切れそうだと忙しく立ち回って、それから同じく完全にアウェイ状態の父と一緒に買い出しに行くのであった。
部屋の中に残されたおばんと姉と私の気まずさといったらなかった。(弟はまだ小さかったので母が抱いて連れて行ってしまった)
おばんの当たり障りのない質問に二人が答える・・・といった何の生産性もない行為が数度行われ、あとは完全に気まずい沈黙が続くのであった。姉も私も、愛想のいい子ではなかった。
特に困ったのは、おばんが、

「お母さんには内緒で」

と、ちり紙に包んだ小銭を渡そうとするときだった。
そういうのはなんとなくよくないという気がしていたので、姉も私も断るのだが、おばんは頑として譲らない。
程よい頃に(?)姉が折れて受け取るのを見て、私も受け取るのであった。小さい頃は全てが姉の模倣だった。

嵐のように母が帰ってきて、なんやかんやと整理をしつくした後で、じゃあ帰りましょと駐車場に向かう途中で、私は殆ど泣きそうになりながら母にポケットの中のちり紙を見せた。

「もらった・・・」

母はぷっと吹き出して、自分のかばんのポケットからちり紙の包みを出して見せた。

「アタシももらった」
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[2010/03/16 12:26] どうでもいいこと | TB(0) | CM(0)

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