これは、私が10年ぐらい前に見た夢です。
それ以上でも、それ以下でもありません。
6まであります。
これは6です。
「え?」
兄がここに来ているわけがないのだ。
兄がここに来られるわけがないのだ。
反射的に踊り場兼中二階のようになっているフロアを仰ぎ見た。
二人掛けのソファが一つと、一人掛けのソファが一つ、L字型にテーブルを囲むように置かれている。そのソファに腰かけているのはまさしく。
ビールじゃない茶色いお酒をずしりと重いグラスで飲んでいた兄は私の姿を認めると手を振ってきた。
「あれ、なつちゃんじゃん」
兄の友達で、この家をデザインした恭二さんが親しげに声を掛けてくる。
この人も豹変するのだろうか? 誰か知らない、女の人の前では?
「酒の入ってないなつちゃんを見られるのは貴重な体験だ」
「残念でした。昨日の酒がまだ残ってます。」
兄は、趣味の悪い薔薇の柄のしわくちゃのシャツに、細身の黒のずぼんを履いていた。
「そのシャツ、趣味悪い」
言うと、その場は一斉に盛り上がった。
「なつは話題が一周遅いんだよ。その話はもうとっくに終わってんの」
私はその趣味の悪いシャツをくいくい引っ張って、兄を洗面所の前まで連れ出した。
「ちょっと、何であんなところで死んでんのよ」
小声で怒鳴ったら、兄はにやにやしながら自分の顎を撫でた。
「そうか、あれ、お前のとこに行ったんだ」
「行ったんだ、じゃないよ。あんなとこにあんなもの置かれた身になってみなよ。目覚めが悪くてたまんないよ」
やっぱり近くで見てもこのシャツの柄はいただけない。しかもところどころに髑髏まで隠れているのだ。悪趣味極まる。瞳子さんは何とも言わないのだろうか。
「俺だってあれに関しては何にも知らないよ。でも、あれがお前のところに行ったということは、あれもお前が持っとくべきってことなんだろうな」
兄は、ちょっと待ってて、と言い置いて、一旦下に降りていった。
再び戻ってきたとき、兄は袋を持っていた。
結婚式の引き出物とかが入っているような、容量の大きな白い袋。
「これ」
渡されて、つい手を出すと、その重さに一瞬よろめいた。
「ちょっと、何入ってんのこれ」
中身は、一見辞書や分厚い本で埋め尽くされているように見えた。が、その隙間から、白い布に包まれた何かがちらりと見えた。
「ちょっともーやだよー。これ以上電気代かけたくないよー」
「電気代て何?」
兄が聞いてくるから答えた。兄は案外真面目な顔をして、
「お前、見かけによらず割とまめな女だな」
と言った。そして、私が袋を持っていない方の手をぎゅっと掴んで、耳元で言った。
「あいつに、見つからないように、頼む」
『あいつ』とは、瞳子さんだ。
兄はそれだけ言うと、
「じゃなー」
と歌い出しそうに陽気に中二階に降りていった。
えー?
無茶振り過ぎない? これ?
私は紙袋を下げて、立ちすくむのみだった。
えー?
そこで目が覚めた。
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えー?(笑)
読んでる最中も読み終わった後も不思議な感じで面白かったです。
最後に手渡された紙袋の中身はなんだったのでしょうか?
これまた頭だったなら両肩に乗っけて
キングギドラのマネが出来るなーと思いました(バカな感想)
[2008/03/25 00:04]
のし
[
編集 ]
シュールな夢だねえ。
袋の中身なんだったんだろう?
気になるー。
読んでたら、「夢十夜」を思い出したよ。
[2008/03/27 22:12]
にーもと
[
編集 ]
>のしさん
コメントどうもありがとうございます。
本をたくさん読んでいる方から「面白い」と言って頂けると、とても嬉しくなります。
袋の中身は・・・続きはWEBで!みたいな感じなんでしょうか(意味不明)
>にーもとさん
コメントどうもありがとうございました。
たまに、みているこっちがびっくりするような夢をみることがあります。
「夢十夜」。文豪と並べてはなりませぬ。なりませぬ。
[2008/03/27 23:15]
あや
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