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作り話 「貝殻ひろい」7 

とりとめもなく書いた作り話です。

11まであります。

これは7です。



次の日の朝、ちょっとした事件が起こった。
朝ご飯を食べようと、子どもたちを仏間に呼びに行くと姿がない。
疲れた顔で台所に立っている琴子に聞いても、子どもたちがどこに行ったか知らないと言う。
「浜にでも行っていたら危ないわ。ちょっと見てくる」
それでも母親の顔になった琴子がつっかけを履いたのと、台所の窓からちびたちが岩中さんのお嫁さんに連れられて坂を上ってくるのが見えたのがほとんど同時だった。
泣きべそをかいている久美を困ったように見ながら岩中さんのお嫁さんが言うには、岩中さんの家の裏庭の崖から、突然見たことのない子どもが落ちてきたという。
この辺の子どもでないのはすぐに分かったのだが、足を滑らせて落ちてきた方は、胸を打ったらしく息を詰まらせて、
「う・・・」
としばらく言葉を発せない状態だったし、落ちなかった方は降りてきたはいいがびゃあびゃあ泣き出して話にならなかったのだそうだ。
それでは落ちたのはかおりなのだ。
当の本人はきょとんとした様子で、ただ黙って立っている。
その目があの墨のような色をしており唇に色がないのを見て、志づはまたすうっと背中が寒くなるのを感じた。この子はきっと自分が異質なのだと感じているのではなくて、自分以外の全てが異質なのだと感じているのだ。
「なんの、落ちたのは2メートルくらいだけど、案外何があるか分からないから病院に行ったほうがいいかもしれません」
岩中さんのお嫁さんはそう言い残して帰っていった。
「あんたたち、なんだってあんなとこまで行ったのよ」
琴子が呆れたように聞くと、久美が泣きながら答えた。
「かおりちゃんが朝、焚き付けを拾いに行こうって。それで拾っているうちに道に迷って、それでかおりちゃんが足を滑らせて落ちたの」
「こんな朝早くに焚き付けなんか拾っても湿気ってるに決まってます。バカじゃないの」
バカじゃないの、は言うつもりがなかったのにぽろっと口からこぼれた言葉のように聞こえた。
この不器用な娘はこういうところで損をする。
損をするから、あんな大きな白いセダンに乗って実家に子どもと一緒に逃げ帰ってきたりするのだ。
「まあまあ、山道でイノシシに出くわしたんでもないんだからいいよ。」
冗談交じりにそういうと、久美がまた凍り付いた。
かおりはとうとう、一言も発さなかった。

琴子と志づ、どちらが言い出したのかは忘れてしまったが、結局午前中のうちにかおりを病院に連れて行くことになった。
大人数でぞろぞろ行くのも変だし、琴子が町(商店街のほう)の人に顔を見られるのがいやだというので、志づがかおりを商店街のはずれの小児科に連れて行くことになった。
この辺の子は皆かかりつけになっている、なぜか床屋の空気が流れているような小児科だ。
お医者から太鼓判をもらい、
「この子は表情がないね」
と余計な一言までもらって、また孫と二人、商店街を抜けて帰っていく。
お医者を我慢したご褒美に、と途中の雑貨店でおもちゃを買い与えようとすると、かおりは首を振った。
「どうして、これにしようか」
と指を差すと、全身でいやいやをするように体をよじった。
結局、水着を入れるようなビニールバッグの中にゾウやキリン、サイやパンダの親子の小さな人形が入ったおもちゃを、志づが持って歩くはめになった。
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[2007/10/29 22:19] 企画! | TB(0) | CM(0)

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