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作り話 「貝殻ひろい」2 

とりとめもなく書いた作り話です。

11まであります。

これは2です。



小さい頃のことは余り覚えていない。
通っていた小学校で、「数年前校庭に突然雷が落ちてきて、女の子が立ったまま黒こげになったことがあるらしい」という噂がまことしやかに流れたりとか、畑の中にアメリカの飛行機が落ちてきて、中の異人が生きているようだが大人たちの誰も近寄れず、そのまま死ぬまで放置していたこととか、覚えていたくないようなことは覚えている。
もっとも、異人の姿は最後まで恐ろしくて志づはしかと見たことはなかった。

浜を歩きながら、志づは祖母から海の話をいくつも聞いた。
祖母は口癖のように、
「よいことも、悪いことも、全部海の向こうからやってくる。ずっと昔からそうだったんだよ」
と言ったものだった。
幼い志づはおばあちゃんが言うことなのだからそうなのかとも思いながらも違和感をもってそれを聞いていたものだった。
なんとなく、むせきにん、なような気がしたのである。
人間はたくさん悪いことをする。それを海が持ってきた、というのは違うような気がする。
しかしそのころの志づにはそれを言葉にするだけの語彙力がなかった。
それで、別のことを聞いたのだった。
「よいことや悪いことはどんなふうにやってくるの?」
祖母はまっすぐ海を見て言った。
「風になって」
不思議そうな顔をした志づに気付いた祖母は、志づの顔に顔を近づけて、笑いながら言った。
「志づは高名の神社を知っているだろう」
志づはうんと頷いた。たかなの神社は志づたち子どもだけでは行ってはならないことになっていたが、それだけに恰好の遊び場だった。
「あの後ろに森がある。鎮守の森だ」
志づはまた頷いた。
「海から吹き上がった風はまずあそこに着地する。」
志づは目を丸くして聞いていた。同じ話の繰り返しの多い祖母から、はじめて聞く話だった。
「それから、志づは遠くて知らないかもしれないが、浜田の神社の森に飛んでいく。」
浜田は名前だけは知っていた。大人たちが漁を競っている集落だ。
「そうしてどんどん神社の森を見つけては風は内地に向かっていくのさ。よいことや、悪いことを落としながらね」
祖母はそこでふと顔を曇らせた。
「でもあんまりにも大きな悪いことは、鎮守の森に着く前に押し寄せることもあるね」
志づの家は代々漁師だった。
志づの祖父は志づの生まれる前に時化で命を落としたのだ。
きっとそのことを言っているのだと志づは思った。
そのとき、思いもよらないほど大きな風が、湿った空気を伴って海からどうと吹き上げてきた。
思わず顔を逸らした志づの耳元で、祖母は小さな声で言った。
「聞いてご覧」
風が通り抜けて波の音だけが穏やかに繰り返す浜のずっと遠くの方で、かすかに木が、森が激しく葉をこすり合わせている音がする。
からからから、と。
たかなの森だ。
思わす祖母を見上げた志づに、祖母は言ったとおりだろう、というように片目だけで笑って見せた。
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[2007/10/29 17:24] 企画! | TB(0) | CM(0)

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