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図書館の魔女 

私がまだ小さくて、小学校が尋常小学校だったころ、学校の図書館はふたつに分かれていて一、二、三年生が使う低学年用の図書館と四、五、六年生が使う高学年用の図書館があった。
高学年用の図書館には低学年は入ってはいけなくて、でも、十年ぐらい前に、

「ものすごくたくさんの本を読んだ許されし者」

が、三年生にして高学年の図書館に立ち入りを許された前例があるという伝説が残っていて、私は秘かにその存在に憧れた。
が、その人は小学生にして古本屋(当時はBOOK OFFとかなくて古本屋は本の虫の大人の出入りする場所だった)巡りをし、ついに本当の魔術の本を探し出したなどと他にも秘密めいた伝説を残しており、とても私がなれるようなものではなかった。

だから私はごくシンプルに、四年生に進級したときに初めて高学年用の図書館に入った。

私は一番近くの本棚に近寄り-今でもはっきりと覚えている-、その一つの棚に収まっている本の冊数を数えた。

そしてその本棚の段数を数え、本棚が何列並んでいるかを数え、図書館を見回し、

(全く興味のない分野の本を差し引いても)

たったの三年間では、たとえ毎日図書館に通ったとしても、この図書館にある魅力的な本を読み尽くすことは不可能だということを察し、深くため息をついた。



六年生のとき、いつものように図書館に行き、いつものように本を借り、図書館から出ようとしたときに司書の先生から声を掛けられた。

「この本、私の私物で図書館には並ばないけど貸してあげる」

ちょうどその年、ミヒャエル・エンデの「モモ」が映画化された年で、それはその映画のムック本だった。

「貸したこと、誰にも内緒にしてね」

先生が言うから、今まで誰にも言わなかった。



「学校図書館の魔女」と呼ばれていたその先生が、昨年退職された。
甥っ子が私の母校に入学したときにまだ先生がいらっしゃって、姉から、

「しかもなんかアタシが小学生だったときより若返ってるような気がする」

と聞いたとき、めちゃめちゃべっくりした。

先生退職おめでとう。これからもずっと素敵な魔女でいてね。
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[2011/05/25 00:49] どうでもいいこと | TB(0) | CM(0)